はなちゃん。
大好きなはなちゃん。
宝塚の娘役はこうあるべきみたいな理想のトップ娘役像とはちょっと違いました。
今や何でもこなすプロフェッショナルなタカラジェンヌさんがたくさん居るなかで下級生の頃から何故かずっと気になっていた静かにひっそり佇む可愛い娘役さん。
なんでだろう…人は時々説明も出来ず言葉に表すことが出来なくても〝なぜか目に飛び込んでくる〟〝なぜか心惹かれる〟〝なぜかとてつもなく愛おしい〟そんな感情を抱くことがあります。
それが私にとっては華優希ちゃんでした。
彼女がただ舞台に立っているそれだけでいい。そう思える娘役さん。
彼女を初めて見たときに、かんわいい。なんと綺麗な瞳。それが第一印象でした。
これほどまでに男役さんではなく娘役さんの魅力の虜になったのも初めてでした。
とにかく可愛い。可愛いという言葉がこの世の中では〝こんにちわ〟くらいに使われているから軽い言葉に聞こえがちですが〝人を惹きつける魅力〟があるという本来の意味の可愛いなんです。
しかし可愛いだけでは真ん中には立てない。あの大きな箱の真ん中で物語を動かすことなんて出来ない。華ちゃんはあの小さな体であの世界の中心に立ち周りを動かす巨大なエネルギーを内在している。彼女の放つ空気はまるで魔法のように人の心を突き動かす大きな力がある。その力は強く優しく愛に溢れている。
それでも彼女の生まれながらに持つ先天性の魅力だけではこの厳しい芸事の世界でヒロインを演じることは難しい。
最初はタカラジェンヌさんにしては珍しいほどに芸事が苦手そうに見えた。歌って踊るという基本的なことにも苦戦しているようだった。
そんな彼女が歌も踊りも目に見える形で変わっていった。相当な努力をしたんだろうなぁとこの私でもわかる。そして元々素材が可愛かったけれど今や艶やかで神々しいばかりの美少女へと育った。何より存在が垢抜けた。メイクもかなり研究したんだろう。そして娘役としての立ち姿が変わった。今まで頑張りすぎて力んでいたのに柚香さんの隣りで柚香さんの呼吸を感じながら自然と舞台に息づくことができるようになった。
まるで赤ちゃんのようだった一人の少女がトップ娘役という立場になり今まで感じたことの無かった大きな責任を背負ってトップスターの隣りに立ち支えるという任務はこんなにも一人の女性を成長させるのだろうか…。
見なくてもいいものを見たり、聞きたくもないものを聞いてしまったり、苦しくて躓いて前に進むのが怖くなったときもあったのかな…。
それでも華ちゃんはそんな顔一つ見せずに舞台の上で笑顔で立っていてくれた…その笑顔からたくさんの勇気をもらい幸せな気持ちを貰った。
華ちゃんの不器用ながらにも一生懸命己と闘い前に進んでいくその姿に、私は知らないうちに励まされ、大きな影響を受けていたんだなぁって…今になって思います。
柚香さんの男役像が女子たちに夢をもたらしているのと同じくらいに華ちゃんの女の子像は女子たちに夢をもたらし勇気を与えパワーを与えてくれたのかもしれない。
柚香さんが〝お芝居の人〟と最近呼ばれるようになったのもその引き出しを引っ張ってくれたのは華ちゃんの存在だと思うんです。
柚香さんの中に眠る感情を華ちゃんが覚醒させ、柚香さんもまた華ちゃんの中に眠る感性を覚醒させた。そうやってお互いをまるで本物の夫婦であるかのように探って探って探り出した先にあの二人のホンモノの絆や愛情が舞台という生の世界で見せてもらえたその奇跡には本当に感謝の気持ちしかない。
この二人の恋愛物語が本当に大好きだった。もっともっと見たかった。そう思う自分は強欲なのかな…でもそのくらい可能性が満ちているコンビだった。
観劇した後に『ああ良かった』って感動することは常だけれど、その余韻を上回り自分の体内に熱くてズシンとする何かを残していくようなそんなお芝居をする二人に出会ったのは初めてでした。
勿体無いなんて言葉は使いたくない。いつしか人は旅立つものだし永遠なんてないのだから。
まだまだ時間はある。一つの公演であんなに変わったんだからあと二作公演したら華ちゃんはとんでもない未知なる娘役に成長するかもしれない。
退団が決まってからもまた新しいスタート。
この限りある時にどれだけの二人の世界を観られるのか…
悲しいし…寂しいし…手離したくないし…
何度だって行かないでって思うけど…
後悔しないようにこの目で見れる限りれいはなちゃんを目に焼き付けたい。
大切で大好きな愛しのトップコンビだから。
華ちゃんを…愛しの華ちゃんを…最後まで応援するって決めたんだ…。