棚からぼた餅ワンス観劇録。
ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)のCS生放送。
本当は昨日花組の〝はいからさんが通る〟を観劇する予定でした。それがまさかの公演中止という展開を迎え、そしてまさかのCSで雪組さんの千秋楽がライブ中継されるという
不幸中の幸いな棚ぼた案件。
雪組トップコンビが退団発表をし、だいきほのワンス観ておけば良かったと後悔し、千秋楽ライビュ日にちを調べたら
〝…22日…はいからさんmy初日ではないか…〟
諦めていたワンスがまさかの展開を迎えて観れることになる。
皮肉なことに
〝観るつもりのなかったスカステ民がたまたま観れて、スカステ契約してない映画館で観るつもりだった人が観れなくなる〟
こんな人もたくさん居たかもしれない…。
大変申し訳無いが私は前者でありました。しかし花組に行けなかった私にとっては救いの神のような…そんな出来事でありました。
〝禁酒法〟の時代に闇を支配する男たちが繰り広げるギャングの世界…貧しい貧困時代から夢を見て駆け上がり昇り詰め辿り着く先に見えたものは…
私はこういう血の匂いのするギャングワールドが苦手だ。気持ちがどんよりするモノが苦手だ。劇場を出る時に足取りが重くなる作品が苦手だ。
苦手要素がいっぱいではないか。
雪組さんは〝悲劇組さん〟なのでそれもありあまり劇場に観に行くのを拒む傾向が私はあった。
自分が他の人以上に〝その世界に入り込みやすい体質〟で自分がしんどくなるせいもありヘビーすぎる作品は体質的にキャパオーバーらしい。
そんな私がまさかの展開でワンスを観れたわけだが…
まず、お爺さんの望海さんが出てきた瞬間に
〝望海風斗が死!な!な!い!生!き!て!る!〟
それでまずは謎の安心感を得る。
私のなかで望海風斗は既に死んでいるのイメージなのだ。
物語が進むに連れてもう
自分がヌードルスになってしまった。
そのくらい望海さんの芝居は人の心を乗っとる技をお持ちだ。
望海さんはどん底から天まで這い上がるエネルギーがある数少ないタカラジェンヌだ。
狂気を得意とするタカラジェンヌ。
喜怒哀楽のなかで〝怒〟は1番難しい感情だと思っている。普段の生活のなかで1番使わない、または使いたくない感情だから。
そこに更に〝哀〟がプラスされるじゃないですか…
望海さんの〝怒〟と〝哀〟の黄金バランスってなんであそこまで最強なのでしょう…あんな最強メンヘラ男子演じられるトップスター他に居ないですよね…
ちなみにうちのれいちゃんは〝喜〟の裏に〝哀〟を隠す〝抱え込み系拗らせ男子〟が得意です(なんだそれ)(聞いてない)
そして相手役の真彩ちゃんのデボラの演技が絶妙だったな…ずーっと違和感があったんです…ショービジネスでトップに辿り着く女性はもっと気高く華やかでゴージャスで大胆なイメージであってほしいのに、真彩ちゃんの演じるデボラは真面目すぎて芯が強くて優しくて少々頭が固そう。
でも最後に病院で再会するシーンを見て
これが真のデボラの姿か…
曲がったことが嫌いな真面目な彼女がずっと背伸びして頑張って勝ち得た夢と引き換えに、大切なものを失い苦しみ耐えて来た最後に〝彼女自身が選んだ真の姿〟に…ホッとしたというか…真彩ちゃんの中の人が重なるような瞬間もあり…彼女にしか出来ない魅力的な役作りに紐解かれた瞬間だった。
他のみんなも素晴らしい演技力だったな…
〝不運と不幸は違うし幸運と幸福も少し違う〟
って小池先生の言葉の意味が深く刻み込まれた作品だった。
不運にも貧しい生まれで〝生きるために生きる〟そんな少年がショービジネスに恋焦がれて可憐で純粋で真面目な少女に恋に堕ちる。
大人になるに連れて2人は〝枝分かれ〟した人生を歩んでいく。しかし枝分かれしたままでお互いの心の中には常にお互いが存在していた。
金を掴んだ男が夢を掴んだ彼女を迎えに行くが〝お金で夢は掴めなかった〟
幸運を手に入れても幸福にはなれないのだ。
愛情、友情、全てを失い、1人で生きていく…
〝確かな幸福だけを求めて〟
みんなの幼少期から高齢期までの滑らかな演技に鳥肌が立った…。
演出家の小池先生の通常営業作品ならドカンドカンと派手にやらかしそうなもんだが、今回は非常に静かでストレートプレイ寄りなミュージカルでその引き算ぷりが余計に役者さんの良さを引き立てて泣く…泣く…泣く…
こんなに暗黒な世界で毎日生きてた雪組生の精神強すぎるだろってくらいに〝闇の世界〟でしかなかった。しかし悲劇なのにいつもの悲劇と違って〝少しだけ心が報われたような〟そんな不思議な悲劇だった。
この公演がコロナウィルスのせいで中止期間が長引いた…。
この状況で千秋楽が出来たこともまるで奇跡だ。
コレも全て関係者の皆様の多大なる努力のお陰と存じます。心から感謝しかありません。
そして全国ライブ中継も中止になり、急遽CSでライブ中継をしてくださったことにより、観劇予定の無かった私がこうやって作品を知れて観れたことがまず奇跡でした。
最後の望海さんの挨拶があまりにも幸せそうで…当たり前に舞台に立てたことが当たり前ではないことでありこんなにも幸せなことなのかと涙していた姿に
テレビの前でもらい泣き…。
そしてそんな望海さんや退団者さんや雪組生を見て思った。
〝これぞまさに不運でありながらも幸福な姿なのか〟と。